Twitter300字SS「ふたりの帰省」

2015/08/01 21:00 □ 短編・ショートショート

Twitter300字SS お題「お盆」

ジャンル : オリジナル。



—–

 

『ふたりの帰省』



 おがらから立ち上った煙が目にしみる。


「…また来年。父さん、母さん」


 亡くなって二回目のお盆が終わろうとしている。

 視界が歪むのは煙のせいだと、胸に宿った寂しさには気づかないふりをする。

 明日は私も家に帰らないといけない。





「やっぱ実家はいいねぇ」


 送り火を終えてリビングに戻ると、シャツの胸元を引っ張りながらテレビを見ている兄と目が合った。

 実家に戻ってきてもなんもしなかったな、この人。



「お兄ちゃんは帰らないの?」


「まだしばらくはいるつもり」


「…そう」



「まだまだ、お前が心配だからね」



 からかうように笑った兄の腕がふわりと私を包む。




「成仏するのは、花嫁姿見届けてからかな」



 半透明の腕は、どこかあたたかい気がした。

 

 

———-

 

状況が状況なので今回は一本だけ。しかも出来たのつい30分前でした。
結構悲惨な設定になってしまいましたが、後味は悪くないかと…!(汗


“Twitter300字SS「ふたりの帰省」” への1件のコメント

  1. カネコ より:

    切なくもあたたかい気持ちになりました。
    お兄さんの妹を大切に想う気持ちが伝わってきました。素敵なお兄さんですね(*´v`*)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

TOPへ戻る