Twitter300字SS「月子」

2016/10/01 22:00 □ 短編・ショートショート

Twitter300字SS お題「月」

ジャンル : オリジナル。



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『月子』

 

「君は本当に月みたいだね」

 

 昔言ったそんな言葉に、彼女は「そうね」と短く返したっけ。

 いつだって優しく、静かに穏やかに僕を見守ってくれていて、暗い夜道みたいだった僕の人生を照らしてくれた。

 ギャンブルで借金作ったって、八つ当たりで殴ったって、笑って許してくれるんだ。

 

「月子?」

「あぁ、お帰り」

 

 我が家の月の化身はその日もいつもと変わらぬ笑顔で振り返り。

 同時に、叩きつける包丁の音を響かせた。

 

「ごめんね。晩ごはんまだ出来てないの」

 

 あぁ、彼女は確かに月だった。

 

 決して僕に見せることはなかったけれど、

 

 決して『裏側』がないわけではなかったのだ。

 

 

 じわじわと赤く染まる部屋の床には、存在を気付かれた太陽が横たわっていた。

 

—–

 

穏やかな話を書くつもりだったのに、なんかえらいもん出来たんやけど何これ……


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