「テキスト」カテゴリー
今まで書いたショートショート・小説等、文章置き場です。
拙すぎてカテゴリ名を「小説」とするのすらおこがましい気がしたので「テキスト」。
基本的にどんでん返しを目標に書いてたり、書いてなかったり。
高校時代とかに書いたものも結構あるので正直黒歴史ですが、面倒なので開き直って手直しもいいわけもなしです。
いくつかはイベントで無料配布した「夢見るものたち」に収録しています。
投稿が「夢見るものたち」より前の分に関してはほぼ全部学生時代に書いたもの。
ツッコミどころが満載なのは自分でわかってますので、そこは流していただけるとありがたい。
最近のもツッコミどころが多いのは大して変わりませんが、まぁ、まだマシかと。
伏線を意識し始めたのはCANDY ×GAMEシリーズの途中あたり(2005年)から。
そのへんから書くものがガラッと変わった気がします。
Twitter300字SS お題「服」
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『コートとファー』
「いいんだけどさ」
首元のファーに鼻を埋める。
「コートがよかったなぁ」
「贅沢言うなよ。人がせっかく」
「ハイハイ私が悪いんですー」
保険料の引き落としを忘れていて、意中の品を買える額は口座に残っていなかった。
次の給料日には売り切れているだろう。
そのまま着て帰るつもりだった薄着の私に、見かねた彼が貸してくれた毛皮は彼の匂いがした。
「くさい」
「失礼な」
「嘘。いい匂い」
「黙ってろ」
耳元の囁きに噴き出す。
「コートは無理?」
「皮伸ばすのは化狸の専売特許。真似してみようか?」
思い出したのはアニメ映画の一場面。
「…いい、これあったかいし」
もう一度、彼の体を引き寄せる。
腹毛を吸うと二股の尻尾がパタパタと背を叩いた。
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「傍らのしあわせ」のふたり、という設定でした。
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Twitter300字SS お題「夕」
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『ユウコ』
何度目だろうか。
会社帰り、夕方の強い光から逃れるように建物へ入る。
料金を支払い足を進めると、途端に薄暗い。
いくつもの部屋を抜け、辿り着いたそこには誰もいなかった。
足音を響かせながら、ゆっくりと近づく。
ガラスの向こう側、スポットライトに照らされ、彼女は蹲っていた。
視線に気づくと、スカートを翻すようにふわりと回ってみせる。
愛おしい。
誰もいないのをいいことに、プレートに書かれた文字から勝手につけた名で小さく呼びかける。
聞こえるはずもないのに。
「…夕子」
倒錯した趣味だと自嘲しながら、自分を魅了した悪魔をうっとりと眺める。
帰り道、あの柔らかそうな肌に触れたいという叶わぬ願いを胸に、
三割引の茹で足を買った。
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「夕コ」というオチですが、食うんかい。
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Twitter300字SS お題「泳ぐ」
ジャンル : オリジナル
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『御利益』
その川に橋はなかった。
舟はあったが船頭は関わりたくないような顔でこちらを眺めている。
向こう岸では祖母が手を振っていた。
「時間です!」
背中を押される。
目の前には轟々と猛る水。
「…泳げと?」
「だってあなた文無しですし」
持っていた渡し賃は触手だらけの怪物が奪っていったらしい。
泳ぐしかない。
意を決して川に入り案の定波にのまれた俺に、祖母は笑顔でバーベキューの串を振った。
「よかった! お母さん、生き返らせてって神様に頼んだの!」
病院のベッドで目覚めると、ザルを被った母親に抱きつかれた。
ヌードル触手の神よ、もういい。
俺ももう九十だ。
向こう岸のバーベキューに思いを馳せながら、必ず母を改宗させようと心に誓った。
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参考:空飛ぶスパゲッティ・モンスター教
なんか…よくわからないオチに…
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Twitter300字SS お題「橋」
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『殺人者の動機』
「遺書には動機がありました。彼は目的を達成して自殺した。やっと犯人がわかったのに…僕の負けだ」
この山荘で三人を殺した犯人すなわち崖下の遺体を見下ろし語る探偵の声に、がっかりした。
せっかく招いたのにこの程度?
「帰ろう。彼は嘘をついた。橋は破壊されてなかったんです」
山荘の従業員と探偵、つまり生き残り全員が車に乗り込む。
「なぜ彼は無関係のあなたを呼んだんでしょう」
客室係が尋ねる。
「きっと止めてほしかったんだ」
そうだよ、役立たず。
俺の嘲笑も知らず一同は山荘を後にし、
そして数分後、死を迎えた。
轟音の中崩れる橋と崖下の人形を撮影しながら、
「この遊びを止めてくれる名探偵…いつ会えるかなぁ」
快楽殺人者は笑う。
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むしろ探偵狙いという「遊び」。
残念ながら、死なないのは名探偵だけなんですよね。
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Twitter300字SS お題「鍵」
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『あかずの部屋』
鍵の掛かった部屋には、何もなかった。
見渡す限りのただの壁。窓も畳も照明もない。
六面がコンクリートの随分と小さな部屋。
先日死んだ祖父は、僕がここに入ることを絶対に許さなかった。
ドアの外で耳を澄まして聞いた祖父の声。
いつも優しいそれが、その時だけは酷く冷たい音だったのを覚えている。
そして今、不自然に厚ぼったい壁に僕は後悔した。
――何かが、埋められているのでは。
祖父はそれを隠していたのでは。
思いつくものは。
ぞくりと、背中を冷たいものが走って手の中の鍵が落ちる。
「違うよ。これは結界」
突然幼い声がした。
ふわりと現れ、鍵を拾った少女は
「座敷童じゃないって言ってるのに」
不機嫌にそう言って、部屋の外へ消えた。
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3ヶ月ぶり? 現実的ホラーにしようか迷った末です。
というかタイトルに偽りがあるな? とりあえず書けたのでよしとします。
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