Twitter300字SS「音楽室にて」「あなたの声が」
2016/08/06 21:00 □ 短編・ショートショート
Twitter300字SS お題「声」
ジャンル : オリジナル。久々に2本。
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『音楽室にて』
「進路かぁ」
面談が終わった放課後の教室でため息をつく。
紙の上の大学名をなぞりながら、自分は本当にこれでよかったのかと。
そんな時、音楽室から聞こえ始めたその曲は、聞き覚えのあるものだった。
校歌だ。
合唱部の練習にしては声が聞こえない。
だとしたら、誰が?
鉄製の扉をそっと開く。
演奏者のリボンは赤。二年生だ。
懐かしいメロディに、記憶の片隅に残っていた歌詞が口をついた。
酷く驚いた顔をする彼女に微笑みかけて、柔らかな旋律にそっと声をのせる。
彼女が驚いた理由には歌い終わった時やっと気づいた。
「先生も一宮小学校だったんですね」
「覚えてるものね」
照れ笑いながら思う。
あの頃の自分には、今の自分はどう見えるだろうか。
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『あなたの声が』
『あーもしもし? 姉ちゃん? オレオレ、信吾』
休日に突然鳴り響いた電話。
「え、なに? どうしたの?」
詐欺であることはすぐにわかった。
『いや、ちょっと金貸してくれないかなって』
でもその声が、あまりに弟に似ていたから。
「いくら?何に使うの?」
言われるまま振り込んだ。何度も。
「返さなくていいから、また連絡しなさい」
死んだ弟も同じようなクズだったけど、あの声だけは好きだった。
お金はあるんだ。使い切れないくらいに。
だから有り余ったお金で、私はその声を買ったのだ。
探偵はもう少しで、彼にたどり着く。
あの声をまた直に聞けると思うと興奮した。
今度は間違えない。
手元に残した声帯だけではやはり満足できないとわかったから。
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オチなし(もうちょいひっくり返したかったけど失敗)とちょいグロで失礼しました。
スピンオフにしようかと思ったんですが、自作には「声」というか聴覚的なものがメインになってるものが多くて逆に選べなかったですな。
次のテキレボアンソロにもちょっとそれ系の下りがありますし(ステマ
弟についての真相はご想像にお任せします。