Twitter300字SS「桜の下には」「花が咲いたら」

2015/04/04 21:00 □ 短編・ショートショート

Twitter300字SS お題「花」 → どっちも「桜」で。

ジャンル : オリジナル。


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『桜の下には』


 慌ただしい日々は季節を忘れさせる。

「もうそんな時期か」
 微かに聞こえたその声に足を止める。

 人気のない道を抜けると、目の前には満開の桜。

 その下で、少女は歌っていた。

 魅了されて何年になるだろう。
 この時期だけに現れる少女の、他の誰にも聞こえない――おそらくこの世のものではない――その声に。


 哀しく優しく時に激しく。
 目を閉じたまま少女は歌い上げる。


 歌が終わると、目を開けた彼女は僕を見つめ、
 そして哀しげに、自らの足下へ視線を送る。


「素晴らしかったよ」
 微笑みかける。
 いつものように、視線の意味には気づかないふりをして。


 君の望みを叶えたら、
 きっと君は消えてしまうだろう?


 だから、見つけてあげない。


 君は僕だけの歌姫。



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『花が咲いたら』


 寺の老木を剪定したとかで、近所の婆さんから桜の枝をもらった。

 男の一人暮らしに花? とは思ったが、昔の花瓶を引っ張り出してみるとなかなかどうして、悪くないもんだった。


 部屋が寒いからか桜はゆっくりと成長した。

 堅いつぼみが一日一日膨らんで、花びらが見え始める。

 明日には咲くかな。

 娘の成長を見守る父親ってこんな感じだろうか。いや俺、彼女すらいないんだけど。


 あぁ、この花が散るまでだけでも、桜の精が恩返しに来てくれたりしないだろうか。




 翌日、仕事から帰ると部屋に灯りがついていた。
 それに味噌汁の匂い。

 驚いていると台所から出てきたピンクのエプロン姿が跪いた。




「桜の精にござる」





 あぁ、うん。そういえば、老木だったよね。



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単純なもんで、時期的に、どうしても桜に流れてしまうなぁ。
2つ目がこうなったのは、桜が儚い綺麗なイメージばっかになるのが嫌だったのかもしれんw




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