Twitter300字SS お題「月」
ジャンル : オリジナル。
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『月子』
「君は本当に月みたいだね」
昔言ったそんな言葉に、彼女は「そうね」と短く返したっけ。
いつだって優しく、静かに穏やかに僕を見守ってくれていて、暗い夜道みたいだった僕の人生を照らしてくれた。
ギャンブルで借金作ったって、八つ当たりで殴ったって、笑って許してくれるんだ。
「月子?」
「あぁ、お帰り」
我が家の月の化身はその日もいつもと変わらぬ笑顔で振り返り。
同時に、叩きつける包丁の音を響かせた。
「ごめんね。晩ごはんまだ出来てないの」
あぁ、彼女は確かに月だった。
決して僕に見せることはなかったけれど、
決して『裏側』がないわけではなかったのだ。
じわじわと赤く染まる部屋の床には、存在を気付かれた太陽が横たわっていた。
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穏やかな話を書くつもりだったのに、なんかえらいもん出来たんやけど何これ……
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