Twitter300字SS お題「帰る」
ジャンル : オリジナル
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『父の未練は』
午後十時。
帰宅した私を迎えたのは父の顔だった。
「メシまだだろ?」
食卓には父ご自慢の料理が並べられている。
「…いただきます」
口に入れたそれは随分と懐かしい味に思えた。
「なんでいるの」
亡くなって三ヶ月。遺品も心も整理できてないのに。
遺影と同じ顔で父は笑う。
「色々と未練があったもんでね。用は済んだから帰るよ」
済んだのは、自分の死で憔悴した娘を励ますこと?
「私も連れていって」
縋った幻は私の頭を撫で、
「残念ながら手一杯でね。これ以上荷物は増やせないな」
私の懇願を優しく拒否した。
翌朝手を合わせた遺影はなぜだか少し恥ずかしそうに見えた。
父の部屋から成人向けの本がなくなっていることに気づいたのはずっと後の話。
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娘の励ましはついでやったんかい的なオチです←
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