Twitter300字SS「あかずの部屋」

2020/06/06 21:38 □ 短編・ショートショート

Twitter300字SS お題「鍵」

ジャンル : オリジナル



—–

 

『あかずの部屋』

 

 鍵の掛かった部屋には、何もなかった。


 見渡す限りのただの壁。窓も畳も照明もない。


 六面がコンクリートの随分と小さな部屋。

 先日死んだ祖父は、僕がここに入ることを絶対に許さなかった。


 ドアの外で耳を澄まして聞いた祖父の声。


 いつも優しいそれが、その時だけは酷く冷たい音だったのを覚えている。

 そして今、不自然に厚ぼったい壁に僕は後悔した。


――何かが、埋められているのでは。


 祖父はそれを隠していたのでは。


 思いつくものは。

 

 ぞくりと、背中を冷たいものが走って手の中の鍵が落ちる。

 

 

「違うよ。これは結界」

 

 突然幼い声がした。

 ふわりと現れ、鍵を拾った少女は

 

「座敷童じゃないって言ってるのに」

 

 不機嫌にそう言って、部屋の外へ消えた。

 

—–

 

3ヶ月ぶり? 現実的ホラーにしようか迷った末です。

というかタイトルに偽りがあるな? とりあえず書けたのでよしとします。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

TOPへ戻る