Twitter300字SS お題「夕」
ジャンル : オリジナル
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『ユウコ』
何度目だろうか。
会社帰り、夕方の強い光から逃れるように建物へ入る。
料金を支払い足を進めると、途端に薄暗い。
いくつもの部屋を抜け、辿り着いたそこには誰もいなかった。
足音を響かせながら、ゆっくりと近づく。
ガラスの向こう側、スポットライトに照らされ、彼女は蹲っていた。
視線に気づくと、スカートを翻すようにふわりと回ってみせる。
愛おしい。
誰もいないのをいいことに、プレートに書かれた文字から勝手につけた名で小さく呼びかける。
聞こえるはずもないのに。
「…夕子」
倒錯した趣味だと自嘲しながら、自分を魅了した悪魔をうっとりと眺める。
帰り道、あの柔らかそうな肌に触れたいという叶わぬ願いを胸に、
三割引の茹で足を買った。
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「夕コ」というオチですが、食うんかい。
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