Twitter300字SS「紳士の条件」
2017/10/07 22:40 □ 短編・ショートショート
Twitter300字SS お題「酒」
ジャンル : オリジナル。
2017/10/07 22:40 □ 短編・ショートショート
Twitter300字SS お題「酒」
ジャンル : オリジナル。
『紳士の条件』
店には若い女性客がふたり。
少し離れて座ると
「マスター、何か甘いお酒を」
眉をひそめた髭面。
「彼女たちに」
数分後、僕にはいつものが、ふたりにはオレンジの液体が差し出された。
「あちらのお客様からです」
驚いた彼女たちがこちらを見る。
笑顔で手を振ると、ふたりは顔を見合わせた。
歓迎したいだけ。下心なんてないよ。紳士だからね。
そうこうしているうちに、奥から見知った顔が現れた。
「お疲れ」
「…来るなって言ったでしょ」
「紳士たるもの女性をひとりで帰らせるなんて」
「ハイハイ心がけは立派だけどね」
待ち人は苦笑して僕の頭を撫でた。
「うちの子がお邪魔しましたー」
頭を下げて、母と僕は店を出る。
三人は笑顔で手を振ってくれた。
—–
うーーーーんなんか上手くいかなかったーーーーー
もう一本何か書きたかったけど断念。
ちなみに、彼が飲んでいたのは牛乳です。
2017/09/02 21:00 □ 短編・ショートショート
Twitter300字SS お題「雲」
ジャンル : オリジナル。
『追憶』
「にゅうどうってなに?」
「お坊さんのことだよ」
教育番組で積乱雲が出てきて、そんなやりとりをしたのを覚えている。
翌日、公園の林の中で母の手を引いた。
「おかあさん、あれもにゅうどうぐも?」
母が空を見上げる。
木々の間から覗く空には細かな雲が敷き詰められていた。
「ううん、あれはうろこ雲。明日は雨かもしれないね」
「…そっかぁ」
もう秋だねぇ、と頭をなでられたあの感触が、焼香の煙の中に蘇る。
──そう、あのとき、母には見えていなかった。
葬儀を終え、天涯孤独となった夜、再び現れたそれは私の前で恭しく膝をついた。
「姫様、お迎えに上がりました」
張り巡らされた蜘蛛の糸。
禿げ頭の化け物は、下卑た顔で私の運命を絡め取る。
—–
『平和な世界』
飛行機雲が青空にいくつもの線を描く。
人工のそれが無数にある以外は雲ひとつないいい天気だ。
駅まで三十分。真夏の午後一時には辛い。
タクシーもバスも残っているのは都市部だけで電車すら本数が限られている。
まったく不便だ。
「どした山田。車壊れた?」
「いや…」
「あぁハイハイ。乗ってく?」
通りすがりの友人が短い会話で状況を察し、自らの背を指さした。
「すまん」
負われて乗ると、マシンはマッハで空を駆ける。
後悔と反省。
僕は昨日、嘘をついた。
安価で手軽な空の路が一般化され、社会は一変した。
平和な世界を望んだ開発者はその形にちなみ 「よいこ」 だけ搭乗可能という制限機能を搭載した。
筋斗雲。
世界はこの製品に支配されている。
—–
『追憶』は入道蜘蛛っていうオチでもっとギャグっぽくなるはずが出来上がってみれば不穏ですね? 蜘蛛坊主が彼女に何をさせるつもりかは不明。
『平和な世界』SF風になりました。筋斗雲は表記も設定も西遊記じゃなくドラゴンボールです。西遊記だとなんか宙返りで乗らないといけないらしいですね…
2017/08/05 22:16 □ 短編・ショートショート
Twitter300字SS お題「休」
ジャンル : オリジナル。ひとつめは二次創作かもしれない。
『復讐の咆哮』
やった。ついにやった。
屈辱のあの日以来、努力を重ねてきた。
高尾の天狗から下町の怪しい術士にまで頭を下げ、時には弟子入りし、不眠不休で修行に励んできた。
二十余年をかけ、古今東西のあらゆる術を学び、ものにしたそれが今、やっと形になったのだ。
涙さえにじむ。
満月の夜、力が最大になる丑三つ時に忍び込んだ一室。
失敗覚悟で挑んだ術。
光が舞い、思ったよりも簡単に、自分の理想通りに、それは現れた。
これで、敬愛するあの方に恥をかかせたあいつに一泡吹かせることが――
喜んだのは束の間。
私の誤算だ。
屏風から抜け出でた虎が私に向かって吠える。
のど笛をかみ切られる瞬間、憎き小僧の声が聞こえた気がした。
ひとやすみひとやすみ。
—–
『THE GAME OF LIFE』
なんでこうなった?
スタートラインは同じだったはず。なのに何故。
休日に突然やってきた幼なじみは、近況を話しながら麦茶の入ったグラスをあおった。
それどころではない俺はそれらを渋い顔で聞き流す。
テーブルを挟んだ左右でこうまで差が付くか。
神様を味方に付けたこの男はイージーモードで人生を順調に進んでいた。
対する俺は結婚すらままならず、SNSは炎上するわ内定もらったのはブラック企業だわ…
昔はこうじゃなかった。平凡な家庭は築けると思ってたのに。
「ゲームなら上手くいくのにな」
先にゴールしたほうが自嘲気味に呟く。
「…ただの一回休みだろ」
過労で倒れて休職中の友人に笑ってみせる。
「今の人生ゲームは難しいよ、ホント」
—–
久々に二本達成!!
『復讐の咆哮』はお題を聞いて何故か最初『一休さん』しか思いつかなかった結果です……誰でしょうかこの人。
『THE GAME OF LIFE』は…人生ゲームをやりながら現実の人生を語る的なやつですが、調べたらなんか…今の人生ゲームすごいんですね…タカラトミーの「獄辛」を想定。ちなみに、所持者は友人のほう。
2017/07/01 22:46 □ 短編・ショートショート
Twitter300字SS お題「渡す」
ジャンル : オリジナル。
『三途の川の向こう側』
気がつけば水面を眺めていた。
多分、三途の川というやつだ。
いつの間にか握りしめていた物は、しばらくしてやっと渡し賃だと理解した。
ろくな死に方ではなかったはずだが、無条件に支給されるものらしい。
しかし肝心の渡し舟が。舟はあっても船頭がいない。
石でも積んで待てばいいのか?
ふと顔を上げると、遠い向こう岸に懐かしい顔が見えた。
「親父…」
去年死んだその人が手を振っていた。
「あ、お客さんで?」
「おぉ、頼む」
六文銭を手渡そうとした瞬間。
つい最近聞いた覚えのある音がした。
手元にあった金属が何かに弾かれ、船頭が倒れる。
「まだ渡らせるわけにはいかない」
ライフルを手に、
「ちゃんと仇を討ってもらわないとな」
組長が笑う。
—–
なんか怖い話になったな…?
彼は多分仇討ちが成功するまで、渡らせてもらえません…
2017/06/03 22:50 □ 短編・ショートショート
Twitter300字SS お題「かさ」
ジャンル : オリジナル。
『雨の日はいつも』
会社を出ると降りしきる雨。
傘のない俺に、同僚が呆れた顔をする。
「仕方ないな。ほら」
差し出されたのは黒い折り畳み。
「え、いや、お前は?」
「多分迎えが来るから」
「多分って…」
「雨降ると頼みもしないのに来るんだよなぁ」
どこかうんざりした声の終わりに、何かが跳ねる音がした。
「あ、やっぱり」
ぴょこぴょこと駆け寄ってきたのは。
「何…これ」
「ペットの花子」
身をすり寄せる花子を困ったような顔で同僚が撫でる。
一本しかないその足首を掴み、胴体らしき笠を広げる。そこにはぱっちりとした一つ目が。
聞きたいことは色々あるが。
「…付け根はどうなってるんだ」
「さあな」
同僚が手を振る。
「女の子のスカートの中覗くのはダメだろ?」
—–
なんか網タイツとか履いてそうなこですが、同僚どこで拾ったんですかね。
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