「ある夜の風景」
2015/07/11 16:41 □ 短編・ショートショート
2015/07/11 16:41 □ 短編・ショートショート
お題 「これが! 俺の! グルメだ!!」 を詰め込んだ、“おいしそう!”な飲食風景
ジャンル : オリジナル
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『ある夜の風景』
冷蔵庫から取り出したものをちゃぶ台に置き、父さんはカップ酒に口を付けた。
皿の上にはマグロの刺身。
チンしたご飯の上に半分ほど無造作に置き、醤油とごま油とチューブのおろしにんにく。
最後に卵を落として口一杯に頬張る。
暗い部屋の片隅で僕はじっとそれを眺めていた。
ほしがれば父さんは僕を叩くから。
ご飯を平らげ、残りの刺身をつついていた父さんは、少しすると赤い顔でごろりと横になり動かなくなった。
僕は起こさないようそろりとちゃぶ台に近づく。
皿まであと少しのところで ――首を掴まれた。
「お父さん! またこんなところで寝て! ミィが狙ってたじゃないの!」
ありつけなかった悲しみに、ただ、にゃあと気の抜けた声だけが漏れた。
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はい、どうしてもオチ重視な桂瀬です。
参加したかったから頑張ってみたけれど……なんかおっさんが掻っ込んでるだけでグルメな話じゃない気がするな(汗
マグロユッケ丼食いてぇ。
2015/07/04 21:00 □ 短編・ショートショート
Twitter300字SS お題「願い」
ジャンル : オリジナル。ひとつは昔書いた掌編の番外編?
『神様の複雑』
君の願いを叶えてあげる。
全知全能のこの僕が。
髪飾りが欲しい?
ダメ。僕は未来も見えるんだ。
そんなの三日後に君のパパが叶えてくれるから。
お菓子屋さんになりたい?
ダメダメ。
それは十五年後、君が勝手に叶えちゃうんだ。
は? 水が飲みたい?
ほら、あそこに水飲み場があるよ。
結局なんにも叶えないんじゃないかって?
だってくだらないことばっかだし。
僕がその気になれば世界だって滅ぼせるのに。
大人しくしてるのを褒めてほしい…よ?
突然頭に乗っかったのは少女の手。
じゃあ、 私が褒めてあげるね、 と。
僕ともあろう者が、こんな幼子に願いを叶えてもらうとは。
ふてくされる僕に、無邪気に笑ってみせた少女の手のひらは、随分と心地よかった。
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『門番の苦悩』
「ここですか、例の門は」
訪ねてきたのは一人の男。
その声は穏やかで、けれど生気がない。
よく来るタイプの死にたがり。
男は門を見る。
向こう側へ行けるのは死んだ者だけ。
そのまなざしは遠く。
――面倒だ。
勝手にしろとナイフを投げる。
ほんの少しの躊躇の後、男は胸を刺し貫いた。
「……死ねない?」
「だろうな」
「誰です?」
いつの間にか戻ってきていた相棒が、自分の頭を小脇に抱えて尋ねる。
「お前と一緒」
「あぁ、早く死ねたらいいですね、お互い」
ここに来て以来毎日死に方を聞いてくる少年。
いい加減消えろとうっかり願ってしまったら、なんと増えた。
ここはあの世とこの世を繋ぐ門。
この糞ゲートは絶対に、人の願いを叶えることはない。
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頑張ったけど今回はちょっと出来が悪い感じ。悔しい……
先に出来たのは門番のほう。あまりにもネタが思いつかないので、懐かしのGatekeeperをひっぱりだしてみたら、変なのが増殖してしまったとさ。
ということで、オフライン企画、300字SSポストカードラリー もよろしくお願いします! (華麗なる宣伝
2015/06/06 21:00 □ 城ノ内探偵事務所, 短編・ショートショート
Twitter300字SS お題「雨」
ジャンル : オリジナル。
『雨が降る』
雨の音が聞こえるんです、ずっと。
でも、ベランダに出ても降ってなくて、降った形跡もなくて。
もう一ヶ月くらいになるでしょうか。
耳鼻科には行ったんですけど異常はないって。
…低血圧、ですか?
大丈夫ですよ。
何日か前にも同じ症状でひとり来られて、その方はご高齢だったので認知症の可能性もありましたけど、あなたはまだ若い。
もし笑い声とか聞こえるようになったらまた来てくださいね。
患者が去った後、僕は気づいてしまった。
数日後、この街で男性の遺体が発見された。
一人暮らしで倒れてそのまま、だったそうだ。
彼女とあの老人は同じ建物に住んでいた。
彼らが真実を知った今、シャワーヘッドが降らせた雨音は、ちゃんと止んだだろうか。
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『憧れ』
仕事帰りに買い出しに来たはいいものの、ずっしり重い袋を両手にぶら下げて外に出た瞬間、天気予報がはずれだったことを知る。
そして同時に。
「お迎えにあがりました。お嬢様」
そういえば言ったことがあった。『あめふり』の歌は私の憧れだと。
彼は私の手から大きいほうの荷物を奪い、代わりにビニール傘を差し出した。
「ありがとうございます」
笑顔で彼に背を向けて。
「これ、よかったら」
空を眺めていたお婆さんに手渡した。
「わざわざ買ったんですか?」
彼の差す大きな和傘に潜り込む。
「昔のもらいもの。よかったの? 傘」
「……憧れだったんですよ」
帰り道、頭の中で幸せな歌が響く。
ぼくなら いいんだ かあさんの
おおきな じゃのめに はいってく
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ひとつめがアレな内容になったので(表現一切してないけどグロ注意が要ったかも? でもそれいきなりネタバレ……)ふたつめは穏やかに。
ふたつめに関しては誰をイメージするかは自由ですよ? えぇ、あいつらのつもりで書きましたけど!! 普通に違う人で変換していただいても問題なさそうかなーと思ってますw
あめふりの歌詞は考えてみれば最初のほうしか知らなくて、でも「あれあれ あのこは ずぶぬれだ やなぎの ねかたで ないている ピッチピッチ~」までは覚えてたので、いやいやランランラン言うてる場合かいなと思ってましたw
調べたらそのあとちゃんと自分の傘貸してあげてたんですね(あげたのかもしれないけど)。
で、ラストの二行に続く。しみじみいい歌だと思いました。はい。
2015/05/02 22:12 □ 短編・ショートショート
Twitter300字SS お題「匂い」
ジャンル : オリジナル。
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『彼女の居る部屋』
仕事から帰ると晩飯の匂い。
今日はハンバーグか。
かすかにトマトの匂いもする。ソースか、それとも添えられたスープか。
「オカエリナサイ」
無機質な声が言う。
空しさに襲われる。
これなら元カノのひどい料理のほうがマシ。
そろそろ限界だ。
「もしもし? この前無料キャンペーンで置いてかれたロボットなんですけど、いらないんで引き取ってほし…え?」
番号はでたらめだった。
電話を切ると、ロボットの口から紙がはき出される。
それは元カノからの警告文。
『捨てようとしたら部屋が排泄物の匂いになるわよ』
匂いだけでも旨そうならいいのに。
そう言ったことを根に持っていたのか。
ロボット型匂い発生装置は今日も旨そうな匂いで俺の部屋を満たす。
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メシマズ彼女について、これの前設定でもう一編書きたくて一時間頑張ったけどなんかまとまらなかったorz
なんかこれだけだと「俺」だけがひどい奴ですが「彼女」はトマトスープのつもりでトマトの代わりに大量の唐辛子入れる人、という設定です。
さて、ちょっと14時間前からのTL追ってくる……
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