「短編・ショートショート」カテゴリー
Twitter300字SS「雨が降る」「憧れ」
2015/06/06 21:00 □ 城ノ内探偵事務所, 短編・ショートショート
Twitter300字SS「桜の下には」「花が咲いたら」
2015/04/04 21:00 □ 短編・ショートショート
2015/06/06 21:00 □ 城ノ内探偵事務所, 短編・ショートショート
Twitter300字SS お題「雨」
ジャンル : オリジナル。
『雨が降る』
雨の音が聞こえるんです、ずっと。
でも、ベランダに出ても降ってなくて、降った形跡もなくて。
もう一ヶ月くらいになるでしょうか。
耳鼻科には行ったんですけど異常はないって。
…低血圧、ですか?
大丈夫ですよ。
何日か前にも同じ症状でひとり来られて、その方はご高齢だったので認知症の可能性もありましたけど、あなたはまだ若い。
もし笑い声とか聞こえるようになったらまた来てくださいね。
患者が去った後、僕は気づいてしまった。
数日後、この街で男性の遺体が発見された。
一人暮らしで倒れてそのまま、だったそうだ。
彼女とあの老人は同じ建物に住んでいた。
彼らが真実を知った今、シャワーヘッドが降らせた雨音は、ちゃんと止んだだろうか。
—–
『憧れ』
仕事帰りに買い出しに来たはいいものの、ずっしり重い袋を両手にぶら下げて外に出た瞬間、天気予報がはずれだったことを知る。
そして同時に。
「お迎えにあがりました。お嬢様」
そういえば言ったことがあった。『あめふり』の歌は私の憧れだと。
彼は私の手から大きいほうの荷物を奪い、代わりにビニール傘を差し出した。
「ありがとうございます」
笑顔で彼に背を向けて。
「これ、よかったら」
空を眺めていたお婆さんに手渡した。
「わざわざ買ったんですか?」
彼の差す大きな和傘に潜り込む。
「昔のもらいもの。よかったの? 傘」
「……憧れだったんですよ」
帰り道、頭の中で幸せな歌が響く。
ぼくなら いいんだ かあさんの
おおきな じゃのめに はいってく
—–
ひとつめがアレな内容になったので(表現一切してないけどグロ注意が要ったかも? でもそれいきなりネタバレ……)ふたつめは穏やかに。
ふたつめに関しては誰をイメージするかは自由ですよ? えぇ、あいつらのつもりで書きましたけど!! 普通に違う人で変換していただいても問題なさそうかなーと思ってますw
あめふりの歌詞は考えてみれば最初のほうしか知らなくて、でも「あれあれ あのこは ずぶぬれだ やなぎの ねかたで ないている ピッチピッチ~」までは覚えてたので、いやいやランランラン言うてる場合かいなと思ってましたw
調べたらそのあとちゃんと自分の傘貸してあげてたんですね(あげたのかもしれないけど)。
で、ラストの二行に続く。しみじみいい歌だと思いました。はい。
2015/05/02 22:12 □ 短編・ショートショート
Twitter300字SS お題「匂い」
ジャンル : オリジナル。
—–
『彼女の居る部屋』
仕事から帰ると晩飯の匂い。
今日はハンバーグか。
かすかにトマトの匂いもする。ソースか、それとも添えられたスープか。
「オカエリナサイ」
無機質な声が言う。
空しさに襲われる。
これなら元カノのひどい料理のほうがマシ。
そろそろ限界だ。
「もしもし? この前無料キャンペーンで置いてかれたロボットなんですけど、いらないんで引き取ってほし…え?」
番号はでたらめだった。
電話を切ると、ロボットの口から紙がはき出される。
それは元カノからの警告文。
『捨てようとしたら部屋が排泄物の匂いになるわよ』
匂いだけでも旨そうならいいのに。
そう言ったことを根に持っていたのか。
ロボット型匂い発生装置は今日も旨そうな匂いで俺の部屋を満たす。
—–
メシマズ彼女について、これの前設定でもう一編書きたくて一時間頑張ったけどなんかまとまらなかったorz
なんかこれだけだと「俺」だけがひどい奴ですが「彼女」はトマトスープのつもりでトマトの代わりに大量の唐辛子入れる人、という設定です。
さて、ちょっと14時間前からのTL追ってくる……
2015/04/04 21:00 □ 短編・ショートショート
Twitter300字SS お題「花」 → どっちも「桜」で。
ジャンル : オリジナル。
—–
『桜の下には』
慌ただしい日々は季節を忘れさせる。
「もうそんな時期か」
微かに聞こえたその声に足を止める。
人気のない道を抜けると、目の前には満開の桜。
その下で、少女は歌っていた。
魅了されて何年になるだろう。
この時期だけに現れる少女の、他の誰にも聞こえない――おそらくこの世のものではない――その声に。
哀しく優しく時に激しく。
目を閉じたまま少女は歌い上げる。
歌が終わると、目を開けた彼女は僕を見つめ、
そして哀しげに、自らの足下へ視線を送る。
「素晴らしかったよ」
微笑みかける。
いつものように、視線の意味には気づかないふりをして。
君の望みを叶えたら、
きっと君は消えてしまうだろう?
だから、見つけてあげない。
君は僕だけの歌姫。
—–
『花が咲いたら』
寺の老木を剪定したとかで、近所の婆さんから桜の枝をもらった。
男の一人暮らしに花? とは思ったが、昔の花瓶を引っ張り出してみるとなかなかどうして、悪くないもんだった。
部屋が寒いからか桜はゆっくりと成長した。
堅いつぼみが一日一日膨らんで、花びらが見え始める。
明日には咲くかな。
娘の成長を見守る父親ってこんな感じだろうか。いや俺、彼女すらいないんだけど。
あぁ、この花が散るまでだけでも、桜の精が恩返しに来てくれたりしないだろうか。
翌日、仕事から帰ると部屋に灯りがついていた。
それに味噌汁の匂い。
驚いていると台所から出てきたピンクのエプロン姿が跪いた。
「桜の精にござる」
あぁ、うん。そういえば、老木だったよね。
—–
単純なもんで、時期的に、どうしても桜に流れてしまうなぁ。
2つ目がこうなったのは、桜が儚い綺麗なイメージばっかになるのが嫌だったのかもしれんw
2015/03/07 21:00 □ 短編・ショートショート
Twitter300字SS お題「時」
ジャンル : オリジナル。
『小早川時計店1』
「困ってるの」
「どれ、見せてごらん」
五歳くらいだろうか。訪れた幼いお客様は店主の手のひらへ小さな時計を差し出した。
「なるほど」
確かに少女が言うように、秒針が逆に回転している。
「直せる?」
「多分ね」
「お願い。あまり時間がないの」
どこかに出かける予定でもあるのか、可愛いお客様は焦ったご様子。
ふたを開けて歯車を見るとやっぱりずれている。食い違いを直し、ついでに電池も入れ替えて時間を合わせる。
「はい、終わり」
顔を上げると既に少女の姿はなく。
「助かったわ」
少女によく似た妙齢の女性が笑っていた。
「間に合ってよかった。あれ以上若返ったらここにも来られなかったもの」
ここは小早川時計店。
壊れた時計が集う場所。
—–
『小早川時計店2』
「…ここは?」
「見ての通り時計屋だよ」
白髪頭の男が答える。その視線は手元の機械に。
「今これ修理中だから」
「あ、いや、俺は」
気がついたらここに居ただけで。
「ま、これでも飲め」
「紅茶?」
「潤滑油」
男は意味ありげに笑う。
世間話をしながら飲んだそれはやっぱり普通の紅茶だった。
「それ、随分安っぽいですね」
「拾いもんだからな。けど、ちょっとしたことで簡単に捨てちまうのはもったいないだろ?」
顔を上げた男の目にハッとする。見透かされたようで。
「腹が減ってると妙なことを考える。帰って美味いもんでも食え」
言われた途端に腹の虫が鳴いた。
「これ請求書な」
「請求書?」
金額は100円。
但し書きは、「腹時計修理代として」。
———-
珍しく微妙にファンタジック。
やっつけ感あるものの、無事参加できたのでよかったです。
なんかそこはかとなく某遺失物預かり所っぽい気も……?
2015/01/31 21:00 □ 短編・ショートショート
Twitter300字SS お題「雪」
ジャンル : オリジナル。
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雪の日
「ママ! 雪!」
はしゃぐ娘は傘を手にくるくると庭を駆ける。
「だーめ」
マスクを外し、空を見上げる我が子の口をふさぐと、指の間から不満げな声が漏れた。
食べさせられない。汚染された空から降り注ぐ灰色の雪。例え咳が出る程度のものでも。
なだめるように背中から抱きしめる。
「ママ、お空青いね」
つかの間の青空が顔を出している。雪はもうすぐ止むだろう。
この雪には浄化作用がある。この街の汚染物質を吸着して、ほんの少しの間だけ、空気を綺麗にしてくれる。
雪が止み、マスクを外す許可を出す。
「冷たくて気持ちいい!」
青空と、一回だけの深呼吸。雪の日には、この子の笑顔が満ちている。
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依り代
もう一度会いたい人がいる。
街で声をかけてきた親切なおばさんにぽつりとこぼしたら、詳しい人だったらしく依り代がどうのと話を聞かせてくれた。
眠くて頭に入らなかったが、人形が必要だとか、本人と似ているといいとか。
おばさんは一緒に会合に出ようと誘ってくれたが恥ずかしかったので断ってしまった。
うちに人形はない。
それならと、ひとり庭に出る。踏みしめるのは白い雪。
思いが強ければ、雪人形でも魂は宿るだろうか。
土の混じった茶色い雪で形作る。鼻は…人参ないし、みかんでいいや。
うん、似てる。なんて思ってたのに。
頭を抱える。きっと何かを間違えたんだ。
妙なものが宿ってしまった。
「ぼくの顔をお食べよ!」
「頼むから帰って」
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雪の日はなんか上手くいかなかったが、依り代は意外と気に入っている(。・ω・。) 馬鹿でなんじゃそらって感じだけどw
真面目っぽいのは難しいです。
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